テーマ展示Ⅰ「大佛次郎記念館の40年 1978-2018」の見どころ

テーマ展示Ⅰ「大佛次郎記念館の40年 1978-2018」の第2部「大佛次郎作品道中図絵」は、全長9.3メートルもある長い絵巻物で、今回の展示では前・中・後期の3期に分けて公開しています。5月30日(水)からは、後期部分が公開されます。

「大佛次郎作品道中図絵」は、漫画家 横山隆一の作品です。昭和期に長く新聞連載された漫画「フクちゃん」で、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

≪大佛次郎作品道中図絵≫の冒頭と最後

大佛次郎と横山隆一は鎌倉に住む友人同士で、大佛次郎の最晩年1972年11月に朝日新聞社主催で伊勢佐木町の有隣堂ギャラリーで開催の「大佛次郎展―人と作品―」のためにこの作品を制作しました。大佛は開催への感謝を込め、闘病と執筆の合間に、大佛夫人を伴って国立がんセンターから足を運びました。

さて、後期公開の絵巻の見どころとして注目していただきたいのは、最晩年の部分に紙の継ぎ目があることです。実は「大佛次郎展―人と作品―」の時点では、天皇の世紀の所までで絵巻は終わっていました。この展示から半年後の1973年4月30日に大佛次郎が永眠します。

その後1978年5月1日に大佛次郎記念館が開館するのですが、それに先んじて1976年10月に馬車道にあったユーリンファボリで「大佛次郎記念会設立記念 大佛次郎展―その人を偲んで」が開催されました。そのとき絵巻に書き足されたのが、最後の部分なのです。天皇の世紀以降の出来事が追加され、最終部分には「佛」と刻まれた供養塔と、塔の前には、大佛の死から半年後の1973年11月に刊行された随筆集「冬の花」が供えられています。ちなみに、供養塔は横山隆一の創作ではなく、残念ながら一般には公開はされていませんが、京都の詩仙堂に実在します。